11.「原米州」の文字商標と「米州」の文字商標の意味が似ているとされ、商標登録されなかった事例

 

本件商標は、「原米州」の構成からなり、引用A商標は、「米州」の構成からなり、引用B商標は「べいしゆう」の構成からなるものである。

そこで判断するに、本件商標の登録査定当時、人形の取引者、需要者の間において、原徳重は、「米洲」の雅号でもって、日本の古典人形の製作者として著名であり、「原米洲」あるいは「米洲」は、同人を表す名称として広く知られていたことが認められるから、本件商標を指定商品中「人形」に使用すれば、「原米洲」の文字に接する取引者、需要者は、その文字が著名な人形作家を表示したもので、その「原」が同人の氏であり、「米洲」がその名あるいは雅号であることを容易に認識できることは明らかである。

また、本件商標は、その文字に相応して「ハラベイシュウ」の称呼を生じ、著名な人形作家の名称あるいは雅号「原米洲」或いは「米洲」の観念が生ずるというべきである。

他方、「米洲」の漢字を縦書きした引用A商標と、「べいしゆう」の平仮名文字を横書きした引用B商標は、それぞれの文字に相応して「ベイシュウ」の称呼を生じ、これらを指定商品中「人形」に使用すれば、著名な人形作家「原米洲」の雅号である「米洲」が想起され、人形作家「原米洲」が観念される。

してみると、本件商標は、引用A商標及び引用B商標の有する人形作家「原米洲」の観念が生ずることにおいて同一であり、称呼において類似し、また、外観においても本件商標と引用A商標とは「米洲」の文字において一致し、その字体も類似するから全体として類似する商標というべきである。