11.カンガルーの図形商標の見た目が似ているとされ、商標登録されなかった事例
本件商標は、左のとおりの構成からなり、引用商標は、右のとおりの構成からなるものである。
本件商標と引用各商標の図形部分を対比するに、確かに、両者は、カンガルーの左右の向き、体の向き、姿勢、目や胸の白抜き部分の有無、前足、後足、尾の部分等に若干の相違がある。
しかし、両者は、横向きで静止状態にあるカンガルーの黒いシルエット図形から成る点、その首から背中、尾にかけてなだらかな曲線を描いており、その後足及び尾を仮想地面上につけて、大きな後足を揃えて垂直に立った状態にあるという点において、一致していると認められる。
したがって、両者を子細に観察すれば相違が認識され得るものの、上記の一致点がカンガルーのシルエット図形の構成上の一致点と評価できることに照らせば、両者の相違はいずれも些細な微差にとどまるものというほかない。
すなわち、両者は、上記のようなカンガルーの特徴を捉えて黒く塗りつぶして描いた点において構成の軌を一にしているため、看者に与える印象が近似したものになり、時と処を異にして両者に接するときは互いに紛れやすいというべきである。
以上によれば、全体として両者は外観上紛らわしく、商品の出所について誤認混同を生ずる虞れがあることは否定できないから、本件商標と引用各商標の図形部分は、外観において類似するというべきである。
引用各商標において、たとえ「KANG●L」の文字が特異であるとしても、そのカンガルー図形の部分についても、文字部分と同程度に看者の注意を引くものと解するのが相当であり、本件商標が付された被服に接した一般消費者が、これを、一般消費者に相当程度広く認識されている引用各商標が示す出所に係る商品であると誤認混同するおそれは否定できないというべきである。