9.いぬの図形商標の見た目が似ているとされ、商標登録されなかった事例

 

各商標から受ける印象ないし認識の内容等は、当該商標の指定商品に係る一般的な需要者において普通に払われる注意力を基準として考察すべきものであるところ、犬がいかに人に身近な動物で、日常目にするものであるとはいえ、本件商標の指定商品に係る一般的な需要者が、その普通に払われる注意力をもって、細部まで正確に観察し、記憶し、想起して商品の出所を識別するとは限らず、商標全体から受ける印象ないし認識によって商品の出所を識別する場合が少なくないことは当裁判所に顕著である。

本件商標(左)と引用商標(右)とは、ともに大型犬の立位の図形をシルエット状に黒塗りで表してなり、どちらの犬も左向きで、駈けたり、跳躍したりしていない静的な状態である点において共通する。

両商標が、構成上の基本的な要素に共通点を有し、その共通性のゆえに、その外観全体から直ちに受ける視覚的印象が著しく似通ったものとなるのに対し、その差異点は、両商標に離隔的に接した場合には明りょうに把握できない程度の微差であるか、そうではないとしても、看者の印象に残り難いものであるのみならず、いずれも両商標の構成上の細部にわたる要素に係る差異であるにすぎない。

そのような差異点から看者が受ける印象の相違は、上記の外観全体から直ちに受ける視覚的印象をさほど減殺するものではなく、両商標の外観は互いに類似するものというべきである。

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