13. モノグラムの図形商標の見た目が似ているとされ、商標登録されなかった事例
本件商標は、左のとおりの構成よりなり、引用商標は、右のとおりの構成よりなるものである。
(ア)本件商標は、下記のとおり、
(a)ローマ字の「B」と「B」を左右に反転したもののモノグラム「本a」を、線で結べば四角形となるように外周の四隅に配し、
(b)各「本a」を結ぶ上記仮想線上のそれぞれの中間に、一見して4弁の花を表したと理解される白抜きのハート型図形4つを、中心部が黒くなるように組み合わせ、かつ、4弁の先端がそれぞれ上下左右に向くように配した図形を有してなる黒塗り四角形「本b」を配してなるところ、該黒塗り四角形は、内部の花弁の向きに合わせるように、頂点の位置が上下左右にあり、一見して、菱形様図形を表したと理解されるものである。
(c)そして、各「本b」を頂点として四角形となるように結ぶ仮想線上のそれぞれの中間に、一見して4弁の花を表したと理解される黒塗りハート型図形4つを、中心部が白くなるように組み合わせた図形「本c」を配してなり、本件商標の構成全体からみれば、「本b」、「本c」は、これらを線で結べば、各「本b」を頂点とする四角形を形成するように、一つ置きに配されているものである。
(d)さらに、上記「本a」、「本b」、「本c」の中心部には、地球儀状図形「本d」を配した構成よりなるものである。
(イ)引用商標は、下記のとおり、
(a)黒塗り円図形内に、一見して中心に小さな黒丸を有する4弁の花を表したと理解される白抜き図形を有してなる図形「引a」を、線で結べば四角形となるように外周の四隅に配し、
(b)各「引a」を結ぶ上記仮想線上のそれぞれの中間に、一見して中心に小さな黒丸を有する4弁の花を表したと理解される白抜き十文字図形を有してなる黒塗り菱形様図形「引b」を配してなるところ、該黒塗り菱形様図形は、4辺が内側にやや湾曲し、頂点は尖鋭である。
(c)そして、各「引b」を頂点として四角形となるように結ぶ仮想線上のそれぞれの中間に、一見して中心に小さな白丸を有する4弁の花を表したと理解される、黒塗り十文字図形「引c」を配してなり、引用商標の構成全体からみれば、「引b」、「引c」は、これらを線で結べば、各「引b」を頂点とする四角形を形成するように、一つ置きに配されているものである。
(d)さらに、上記「引a」、「引b」、「引c」の中心部には、ローマ字の「L」と「V」のモノグラム「引d」を配した構成よりなるものである。
(ウ)以上の(ア)(a)?(d)及び(イ)(a)?(d)によれば、本件商標と引用商標は、外周において、モノグラム「本a」と黒塗り円図形内に白抜きの4弁の花を表した図形「引a」との顕著な差異、及び中心部において、地球儀状図形「本d」とモノグラム「引d」との顕著な差異を認めることができる。
また、「本b」と「引b」、及び「本c」と「引c」は、花弁の形状、黒塗り菱形様図形(又は黒塗り四角図形)の形状等細部において差異を有することが認められる。
しかしながら、「本c」と「引c」は、いずれも中心部を白とする黒塗りの4弁の花を表したと理解される点と、4弁の先端が細く尖り、かつ、それぞれ上下左右の方向に向いている点で外観上近似しており、また、「本b」と「引b」においては、いずれも黒塗り菱形様図形を表したと理解される図形内に、「本c」又は「引c」を白黒反転させた図形を有してなる点で近似するものである。
さらに、両商標の構成の全体をみれば、「本b」と「本c」、「引b」と「引c」は、それぞれ中心部「本d」又は「引d」を取り囲むように、各「本b」又は各「引b」を頂点とする四角形を形成して交互に配列されている点において近似するのみならず、両商標は、外周に、4つの同一図形を、線で結べば四角形となるように配した点において近似するものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標は、外周に配した「本a」と「引a」、中心部に配した「本d」と「引d」を、それぞれ抽出して対比すれば、外観上異なるものであるとしても、商標全体からみた各図形の配列方法、「本b」と「本c」、「引b」と「引c」における4弁の花の表現方法等において、着想の軌を一にするものであって、これらの近似性が看者に強い印象を与え、記憶されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標は、これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合、引用商標が著名であることを考慮すれば、本件商標に接する需要者が直ちに引用商標を想起又は連想し、両商標が使用された商品について、出所の誤認、混同を生ずるおそれがある程度に外観上近似した商標といわなければならない。