14.「数検」と「数研」の読み方が似ているとされ、商標登録されなかった事例

 

本願商標は、「数研」の文字を縦書きしてなり、引用商標は、「数検」の文字を横書きしてなるものである。

本願商標と引用商標との類否について判断するに、本願商標と引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、いずれも「スウケン」の称呼が生ずることは明らかである。

ところで、請求人は、請求人会社は単に「数研」と略称され、同社の出版物等は「数研の○○」として取り引きされていること、各種の資格技能検定試験が「英検」「大検」「漢検」「文検」のように略して一般に採択使用されていると同様に「全国数学検定試験」を「数検」と略称していることから、本願商標と引用商標は称呼を同じくするとしても、互いの外観及び観念の顕著な差により、異主体かつ異質の内容を看取させる非類似の商標である旨主張し、証拠を提出している。

しかしながら、「数研」の文字からなる商標が教科書、学習参考書等の書籍について使用されていること及び「数研」の文字が請求人会社の略称として用いられていることが認められるとしても、「数研」の文字は、これに接する取引者、需要者が直ちに請求人会社を想起し、また、同人によって使用されている商標を連想し、かつ、これら以外の事物・事象を想起・連想し得ないほどに広く認識されているものともいい難いところであり、他方、「数検」の文字は、「全国数学検定試験」そのものが実用英語技能検定試験(英検)ほどに親しまれたものではなく、「全国数学検定試験」の略称として広く一般に知られているものとはいえず、これに接する取引者、需要者が直ちに該検定試験を想起することはないというのが相当であるから、むしろ、本願商標及び引用商標はいずれも造語からなるものと認識されるものといわざるを得ない。

そうすると、同一の称呼を生ずる両商標が、文字を異にすることによって類似性が否定されるまでには至っていないというべきであるから、請求人のこの主張は採用することができない。

してみれば、本願商標と引用商標は、外観において相違するとしても、「スウケン」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。