9.「Plasticant mobilo」と「MOBILON」の読み方が似ているとされ、商標登録されなかった事例

 

本願商標は「Plasticant mobilo」、引用商標」は、「モビロン」の片仮名文字と「MOBILON」の欧文字を二段に横書きしてなるものである。

本願商標は、その構成、態様よりみて、その構成中の「mobilo」の文字部分が図案化した文字で大きく顕著に表示されていること、「Plasticant」及び「mobilo」の文字について、我が国で最も普及している英語においては該当する語がなく、特定の語義が見出せず、構成文字全体よりも特定の観念が生じないことから、本願商標に接する取引者、需要者は、必ず「Plasticant」と「mobilo」とを一体として認識するよりも、むしろ図案化し大きく顕著に表示されている「mobilo」の文字に着目し、この文字及びこの文字に相応して生ずる「モビロ」の称呼をもって取引にあたるとみるのが相当である。

(2他方、引用商標は、「モビロン」の片仮名文字と「MOBILON」の欧文字を二段に横書きしてなるものであるところ、片仮名文字は欧文字の読みを特定するために表示されたものと容易に理解され、その構成文字に相応して「モビロン」の称呼が生ずることは明らかである。そして、引用商標は、我が国で最も普及している英語においては該当する語がなく、特定の語義を見出すことはできないから、観念のない造語商標と認められる。

しかして、本願商標より生ずる「モビロ」と引用商標より生ずる「モビロン」の称呼について比較すると、両称呼は、称呼の識別上重要な要素を占める冒頭音を含めて「モビロ」までの構成音を全て同じくし、その異なるところは引用商標の末尾音に「ン」が付加されている点のみである。そして、末尾音は、冒頭音に比較して称呼の識別においては重要視されない音であるばかりでなく、「ン」の音は、鼻音で弱い音であって、他の構成音と比較してほとんど聴取し難い音となるものであり、印象の弱い音である。

そうすると、両称呼は、それぞれ一連に称呼するときは、全体の語調語感が近似したものとなり、本願商標と引用商標とは、聴者をして互いに相紛れるおそれのある称呼上類似する商標である。