登録商標は使われてこそ価値がある~不使用商標の取消制度1~

1、使用されていない登録商標の問題

商標登録は「無事登録されたから安心」というものではありません。
商標登録には、2つの機能があります。
その商標を自社が独占的に使用する権利を得ること、その商標と似ている商標の他社による使用を防止することという機能です。
どちらも直接利益につながるものではなく、いわば保険的な機能と言えます。
しかし、自社の営業を継続する上ではとても重要な機能ですので、商標登録は年間10数万件が出願されているのです。

さて、この登録商標。
実際に使用しないことには、当然ブランド価値の向上も見込めません。
ただ、実際には市場の変化等により、使用されずに寝かされたままという商標が多くあります。
この寝かされたままの商標を「不使用商標」といいますが、ちりも積もれれば山となり、現在では、かなりの数の不使用商標があります。

このような不使用商標を放置しておくと、これから商標登録をして、商売を始めようとしている他社の意欲をそぐことになります。
そこで、「3年以上不使用の登録商標を取り消してください」と特許庁に請求できる制度というものがあります。
この制度では、完全な「不使用」の商標だけを取り消すことができるとされているので、登録商標を持っている会社だけでなく、その会社からライセンスを受けている会社なども使用していないことが必要になります。

今回取り上げるのは、商品が流通する過程にいる流通業者が、ライセンスを受けて商品を製造販売する会社と同視することができるのかが争われた事件です。

2、流通業者であっても、商標法上の登録商標の使用者と言えるのか

裁判所は以下のように判断して、流通業者であっても、商標法上の登録商標の使用者と言えるとしました。

商標法50条1項には、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という。)のいずれもが、同項に規定する登録商標の使用をしていないときは、取消しの審判により、その商標登録は取り消される旨規定されている。ここで、商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。

このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法50条の不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。

本件においてこれをみると、
①流通業者A社は、商標権者B社が製造し、本件商標が付された商品を仕入れ、楽天市場において販売を継続していることが確認できること、
②楽天市場のA社サイトには、本件使用商標の表示されたB社の製造に係る商品の包装の写真が掲載されており、その掲載態様に照らすならば、本件使用商標は、その商品の出所がB社であることを示しているといえること、
③B社の製造に係る商品は、流通業者を介して、消費者に販売することを前提として、市場に置かれた商品であることが明確に理解でき、B社も、そのことを念頭に置いた上で、商品を販売し、A社はこれを仕入れていると解されること等の事実が認められる。

以上のとおり、本件商標の商標権者であるB社は、流通業者を介して、本件審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと認めることができる。

3、商標登録されてからの商品の販売をするまでのタイムラグについての教訓

商標登録できたのなら、ドンドン営業を行って、ブランドとして育て頂きたいものです。
しかし、何らかの事情で、商品の製造販売やサービスの提供が遅れたり、休止することが出てくると思います。
そのような場合でも、将来的にその商標を使用したいのであれば、この不使用取消を請求されないようにしなければなりません。
今回取り上げた事件の他にも、流通業者の使用でも、商標権者等の使用と同視されるとして不使用には当たらないとされた例はあります。

もし販売休止中の商品の商標について不使用取消が請求されたなら。
製造済みの商品の流通が過去から現在にかけてどうなっているのかを調べてみるのもいいと思います。

取り消しを免れるための1つの手段として有効な場合もあるのではないでしょうか。

 

 

この記事は知財高判平成25.3.25(平成24(行ケ)10310)を元に執筆しています。