商標権侵害との警告状を受けたった時の検討~「商標的使用」に関する商標法26条1項6号と「クイックルック」事件を参考に~

商売を続けていると、突然、商標権侵害であるとの警告状が送られてくることもあるでしょう。
そんな時、相手の言い分が法的にも納得がいくものであれば当然、使用している商標の変更をするなどの対応を取らなければなりません。
しかし、その警告が本当に法的に正しいものばかりとは言えません。

今回は、そのような場合に役に立ちそうな反論手段について、お話しします。

1、商標登録は自社の商品・サービスを他社のそれと区別できる機能が重要。

商標登録は自社の商品・サービスを他社のそれと区別できる機能が重要です。
そこで、同じ表示を用いていたとしても、それが自社の商品・サービスと他社のそれらとを区別するような対応で用いられていなければ、商標権侵害は生じないということになります。
このこと自体は、古くから認められていましたが、近年の法改正で、商標法にも明記されました。
それが、商標法26条1項5号に規定です。
そこには「商標権の効力は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標には、及ばない。」と規定されています。

2、商標権侵害事件での主張例。

では、具体的にみていきましょう。

①事件の概要

原告は「Q u i c k L o o k」という商標を、指定商品「コンピュータ」等について有していました。
この原告が、被告が販売するコンピュータの広告塔に「HP Q u i c k L o o k」などの表示を用いていたために、商標権侵害による損害賠償請求を求めたというものです。

②商標権侵害についての裁判所の判断

裁判所は、広告等の具体的な表示内容を確認しながら、その表示の用いられ方が、商品に識別標識としての「商標」の使用にあたるかを判断していきます。

(1)

例えば、広告には以下のような表示がありました。
・丸時計及び封筒を模した図形を表示したボタンの写真の下等に「QuickLookボタン」との表示
・丸時計及び封筒を模した図形を表示した「f5」キーの写真の下に「QuickLookキー」との表示

この表示について、裁判所は
「「QuickLookキー」,「QuickLookボタン」の名称は,上記のとおり,被告商品のウェブサイトの広告又はカタログにおいて表示されているから,被告商品に関する広告中には表示されているということができるが,その使用態様は,被告商品のキー又はボタンの意味を説明するものであって,被告商品そのものを表示するものとして使用されているとはいえない。
したがって,後に検討するとおり,被告の上記行為が,被告商品の商標としての使用に当たるということはできない。」
と、判断しています。

(2)

また、以下の表示もありました。
・電源をオフしてしまったが,今すぐメールをチェックしたい」,そんな時,QuickLookキーを押せばすばやくデータにアクセスできるので,忙しいビジネスパーソンにも嬉しい機能です。

この表示ついて裁判所は、
「被告各標章(被告が使用している「Q u i c k L o o k」の表示)につき,被告製のノート型コンピュータの電源が切られているなど,直ちにメールやスケジュールを開くことができない状態であっても,専用ボタンを押すことにより,すばやくメール等の内容をコンピュータの画面に表示させることができるという,被告製のノート型コンピュータが一般的に有する一つの機能又は上記機能を実現させるために当該コンピュータに搭載されたソフトウェアの名称を表示又は意味すると認識するにとどまるものと認められ,被告各標章から,特定のコンピュータ商品としての被告商品の出所を識別するものとしてその出所を想起するものではないと認められる。
したがって,被告のウェブページにおいて被告商品の自他商品識別機能・出所表示機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,ウェブページにおける被告各標章の使用は,被告商品に関して,商標としての使用(商標的使用)に当たらない。」
と判断しました。

裁判所の認定とそれに対する判断はこれに限るものではなく、多岐にわたりますが、あまりにも長いので、ここでは省略します。
重要な点は以上の通りです。

3、商標権侵害との警告書が届いた場合の心構え

警告書が届いたら、本当に自社が用いている表示が、相手方の言う通り商標権を侵害しているのかを確認しなければなりません。
そして、今回取り上げた事例の様に、「ただ機能の説明に用いている」程度のものであれば、商標権侵害は成立しないかもしれません。
商品自体に自社ブランドが表示されていて、キャッチフレーズ的に使用している場合なども、この「商標的使用に当たらない」という反論を考えてみるのもいいと思います。
例えば、今回取り上げた事件では、被告の商品には「HP Mini 5102 Notebook PC」,「HP EliteBook 2740p Tablet PC」などの表示が付されており、こちらの方が自他商品を識別する商標であるというような認定がなされています。

「商標的使用」は判断が難しいものではありますが、反論のための1つの材料として使えるものですので、ご紹介しました。

 

 

この記事は東京地判平成23.6.29(平成22(ワ)18759)を元に執筆しています。