スニーカーにあしらわれている「3本」のストライプと「4本」のストライプは相紛らわしいと言えるか

問:「3本」のストライプが入ったスニーカーと言えば、どのブランが思い浮かびますか。

この問いに対しては、「アディダス」と答える人が多いと思います。
そして、この3本のストライプも商標登録されているのです。

今回取り上げるのは、「4本」ストライプが商標登録されてしまったときにアディダス側がその登録商標の無効を請求した事件です。

1、新たになされた商標登録と特許庁の判断

新規に出願された「4本」ストライプの商標(以下、本件商標と言います)について、特許庁は商標登録を認めました。
そこで、アディダスが本件商標は自社の3本ストライプの登録商標(以下、引用商標と言います)と混同を生じるので商標登録は無効であると主張しました。
しかし、特許庁は以下の通り判断して、無効を認めませんでした。
「本件商標と引用商標構成中の図形部分とは,その構成態様において明らかな差異を有しているものというべきであり,この差異は比較的簡潔な構成からなるこれらの商標の外観に与える影響は大きく,図形全体から受ける視覚的印象を異にするものであるから,これらを時とところを異にして離隔的に観察するも,外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない」

そこで、アディダスはこの特許庁の判断を不服とし、取り消しを求めて裁判所に提訴しました。

2、商標登録の無効を認めないとする特許庁の主張。

ア 本件商標と引用商標の相違点の認定の誤りの主張について

(ア) 原告使用商標との対比に関する審理不尽の主張につき

原告は,審判請求書において,対比する引用商標として引用商標を主張している。
カタログや雑誌等に表示されている商標は,引用商標の周知性を立証するための資料になるかもしれないが,これらの商標を全て本件商標と対比する必要性があるわけではなく,飽くまでも基本となるのは引用商標である。
また,審決においては,「本件商標と引用商標(使用に係る3本線を基調とする商標を含む。)とは,十分に区別し得る別異の商標というべきものである」とあるように,原告使用商標をも考慮した上での認定であり,審理不尽はない。

(イ) 本件商標と引用商標との相違点についての評価の誤りの主張につき

本件商標が,仮想垂直線に対し左方向に傾けた細長い4本の台形様図形を,仮想底辺に対し右上がりに該図形の幅よりもやや広い間隔をもって配置し,それぞれの台形様図形に破線及び小さな丸点で装飾を施した構成よりなるものである以上,その構成に基づき本件商標の構成を認定した審決には,何ら誤りはない。
原告は,需要者は,3本線がいかなるデザインで構成されているものであるかにかかわらず,「3本線」の存在を目印にこれが使用されている商品が原告の製造,販売に係る商品であることを認識,理解していると主張するが,3本線により構成される商標が全て原告の独占するものではない。

イ 出所混同のおそれに関する認定の誤りの主張について

(ア) 本数の少ない4本線と3本線の差は歴然であり,本件商標と引用商標とは別異の商標である。
また,被告は,原告の3本線商標の信用力,顧客吸引力にフリーライドする意図はない。
したがって,本件商標の登録は,商標法4条1項15号に違反してされたものということはできないとした審決の認定,判断に何ら違法はない。
(イ) 「3本線を基調とした引用商標(その中でも,カタログ等に表示されているものあるいはスポーツシューズに施されている種々の色彩を施されている状態のものも含めて,引用商標1及び引用商標2の図形部分,引用商標3ないし引用商標13及び引用商標23)は,本件商標の登録出願前より,我が国においても,スポーツ用品,特に,スポーツシューズをはじめとする靴の商標として,取引者・需要者の間に広く認識されていた」ことは認める。

3、本件商標の商標登録を無効とするか否かについての裁判所の判断

(1) 審決は,本件商標の構成について,「別掲(1)(判決注:本判決別紙記載1)に示したとおり,仮想垂直線に対し左方向にやや傾けた輪郭線で描いた細長い4本の台形様図形を等間隔で,仮想底辺に対し右上がりに配し,その4本の台形様図形は右端に位置するものが左端のものよりやや長くなるように左端から右方向に順次長く表され,それぞれの台形様図形は平行に向かい合う二辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれているものである」(審決11頁11行~17行)と認定した上,引用商標と対比し,①本件商標は,4本の細長い台形様図形から構成されているのに対して,引用商標の図形部分は,いずれも3本の短めの台形様図形等から構成されている点,②本件商標を構成する4本の台形様図形には長短の差があるものの,その差異はそれ程大きな差異ではなく,4本の台形様図形が細長いものであることとも相俟って,全体の傾斜角度も比較的緩やかなものとして看取されるものであるのに対して,a)引用商標1~10,23の構成中の靴の側面に描かれた3本の台形様図形は,その長短の差がかなり顕著であって,3本の台形様図形が短めのものであることとも相俟って,全体としてかなり急な傾斜角度を有する図形として看取される点,b)引用商標11~13を構成する3本の台形様図形には長短の差があるものの,視覚的には極めて僅かなものであって,むしろ3本の台形様図形が並列しているかのごとき印象を与えるものである点,c)引用商標14~17の3本の平行四辺形様図形に至っては均等な長さのものが並列しており,しかも,引用商標11~17を構成する図形は,左右の縦線が鋸の歯状の形態に描かれているものである点,d)引用商標18は,3本の二重輪郭線からなる台形様図形からなるものではあるが,それぞれの間隔が極めて狭いことから,むしろ,全体として,縞模様を有する1つの台形様図形であるかのごとき印象を与えるものである点,③本件商標は,各台形様図形にはステッチ状の模様と多数の小さな丸点が表されている点において明らかな差異を有している,と指摘した上,本件商標と引用商標とは外観において相紛れるおそれはないとし,また,引用商標から「サンボンセン」,「スリーストライプス」の称呼及び「3本線」の観念が生ずるとしても,本件商標は,特定の称呼及び観念を生ずることはなく(仮に,本件商標から「ヨンホンセン」の称呼及び「4本線の図形」の観念が生ずるとしても),両者の称呼及び観念については比較すべくもなく,十分に区別し得るものであるとして,本件商標の登録は,商標法4条1項15号に違反しないと判断した。
これに対し,原告らは,上記①の点について,a)ストライプの本数が4本か3本かの違いは大きな相違点とはいえない,b)本件商標の指定商品「履物,運動用特殊靴」においては,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されているところ,本件商標を構成する4本のストライプの間には3つの余白部分が存在し,当該部分が,「3本のストライプ」,「3本線」として認識されるおそれが高い,上記②の点について,原告らは,3本線商標を様々な異なるデザインで長年にわたって使用しているから,需要者は,3本線がいかなるデザインで構成されているものであるかにかかわらず,3本線の存在を目印にこれが使用されている商品が原告の製造,販売に係る商品であると認識,理解する,上記③の点について,「ステッチ状の模様」は,本件商標の指定商品「履物,運動用特殊靴」に商標を付す場合に生じる縫い目に相当する部分で,ありふれた形態であり,「多数の小さな丸点」は,原告使用商標のデザインとして古くから採用されているパンチング(小さな丸い孔)の模様に相当するものであると主張する。

(2) 認定
ア 本件商標
本件商標は,別紙記載1のとおり,仮想垂直線に対し左方向にやや傾けた輪郭線で描いた細長い4本の台形様ストライプを等間隔で,仮想底辺に対しやや右上がりに配し,その4本の台形様ストライプは右端に位置するものが左端のものよりやや長くなるように左端から右方向に順次長く表され,それぞれの台形様ストライプは平行に向かい合う2辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれているものである。

イ アディダスの商品等表示
(ア) 「3本線を基調とした引用商標(その中でも,カタログ等に表示されているものあるいはスポーツシューズに施されている種々の色彩を施されている状態のものも含めて,引用商標1及び引用商標2の図形部分,引用商標3ないし引用商標13及び引用商標23)は,本件商標の登録出願前より,我が国においても,スポーツ用品,特に,スポーツシューズをはじめとする靴の商標として,取引者・需要者の間に広く認識されていた」(審決11頁2行~8行)ことは,被告も認めるところである。
(イ) そして,証拠及び弁論の全趣旨によれば,更に以下の事実を認めることができる。
a 原告アディダスアーゲーは,ドイツ連邦共和国ヘルツオーゲンアウラッハを本拠とするスポーツ用品メーカーであり,原告アディダスインターナショナルは,原告アディダスアーゲー及び同社が有するアディダス・グループの商標権,その他の知的財産を管理運用するためにオランダ王国アムステルダムに設立された原告アディダスアーゲーの子会社である。登録に係る引用商標1~6,11~23は原告アディダスアーゲー名義で登録され,引用商標7~10は原告アディダスインターナショナル名義で登録されている。
b アディダスは,昭和24年,別紙記載5のような3本線を基調とする商標(以下,細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標を「スリーストライプス商標」という。)を採用し,これを甲の両側面にサイドラインとして付したデザインの運動靴の製造,販売を開始した。
以降,アディダスは,スリーストライプス商標を,甲の側面に付したデザインの運動靴の製造,販売を継続し,スリーストライプス商標を付したアディダスの運動靴は,昭和27年の第15回オリンピック大会(ヘルシンキ大会)では西ドイツ代表選手により使用され,その後も,多くのオリンピック大会,サッカーのワールドカップ大会,テニスの国際大会などにおいて,各国の代表選手らによって使用され,このことは,スリーストライプス商標を付した運動靴の写真と共に,アディダスのカタログ,雑誌広告,スポーツ紙等において紹介された。
c アディダスは,平成元年から平成8年頃まで,アディダスの商品カタログの裏表紙や雑誌掲載広告において,スリーストライプス商標と共に,「3本線はアディダスの登録商標です」(甲35),「ハイテクを秘めた3本線」(甲57),「勝利を呼ぶ3本線」(甲57),「勝利をめざす三本線……スリーストライプス」(甲62)との宣伝文句を用いた広告を行った。
d 我が国において,昭和46年頃から平成10年までは,当時アディダスの商標の日本における使用権者であった株式会社デサント(途中,兼松スポーツ用品株式会社を含む。)を通じて,アディダス製の運動靴等が販売され,これらの商品にはスリーストライプス商標が使用された。これに続く平成11年1月から現在に至るまでは,原告アディダスアーゲーの子会社として設立されたアディダスジャパン株式会社によって,アディダス製運動靴の販売が継続され,スリーストライプス商標が使用されている。
e アディダスの製造,販売に係る運動靴におけるスリーストライプス商標の使用態様は,昭和24年から現在まで,いずれも靴の甲の両側面の靴底とアイレットステイ(靴紐を通す穴が設置される部分)を結ぶ位置にサイドラインとして付されている。
そして,アディダスが運動靴の甲の両側面に付したスリーストライプス商標の具体的な構成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在する。
また,アディダス製の運動靴において,甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様のあるものが多数存在し,3本のストライプ間中央又はストライプ中央にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在する。

ウ 取引の実情
証拠及び弁論の全趣旨によれば,①運動靴においては,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されていること(ただし,靴の構造上,引用商標23のようにスリーストライプ等の図形のみであり,文字のロゴがないものがほとんどである。),②そのような態様で付された商標においては,商標上端部はアイレットステイと重なり,下端部は靴底と甲の接合部と重なるため,商標の上下両端部における構成は視認しにくいこと,③また,4本線商標を靴の甲の側面に付したもののうち,4本線とそれらの間に存在する3つの空白部分とを,2色で別々に塗り分けるなどすると(例えば甲121,被告販売商品であるスニーカー),これを見た場合,4本線の部分と3つの空白部分のいずれが強い印象を与えるか(4本線か3本線か),外観において紛れる場合が見受けられること,が認められる。

(3) 判断
ア 上記(2)イに認定した事実によれば,運動靴の甲の両側面(靴底とアイレットステイを結ぶ位置)にサイドラインとして付されたスリーストライプス商標(細部のデザインの相違を捨象した3本線を基調とする商標)は,スリーストライプという語が需要者の間に用語として定着していたかはともかく,本件商標の登録出願時である平成17年5月25日及び登録査定時である同年10月28日において,我が国において運動靴の取引者,需要者に,3本線商標ないしスリーストライプス商標といえばアディダス商品を想起するに至る程度に,アディダスの運動靴を表示するものとして著名であったものと認められる。
スリーストライプス商標の具体的な構成には,使用時期や製品によって,ストライプの長短,幅,間隔,傾斜角度,輪郭線の形状等,細部のデザインが異なる様々なものが存在するが,これら細部の相違は,スリーストライプス商標の基本的な構成である3本のストライプが与える印象と比較して,看者に異なった印象を与えるほどのものではないというべきである。
イ 本件商標は,上記(2)アのとおり,細長い4本の台形様ストライプからなるものであるが,その指定商品「履物,運動用特殊靴」に属する運動靴においては,同ウに認定したとおり,靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用され,そのような態様で付された場合,商標の上下両端部における構成が視認しにくく,また,4本線の部分とそれらの間に存在する3つの空白部分につき,4本線か3本線かが紛れる場合が見受けられるのであり,その場合,参考図(別紙記載11a,b)のような構成のものと区別することが困難であるともいえる。
そして,4本線商標とスリーストライプス商標との相異の程度について,別の角度から検討すると,本件商標の構成と同様に4本の長短のある台形様図形をやや傾けて互いに平行に等間隔で配置してなる4本線商標(引用商標1,2の図形部分に似た白色の4本線のもの1件,黒色の4本線のもの3件)の事例について,特許庁において,アディダスの業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当するとの認定がなされ,登録無効審決又は登録取消決定が確定していることが認められる(甲93の1,2,甲94,122~127)。
そうすると,運動靴の甲の側面に付された本件商標に接した取引者,需要者は,本件商標の上下両端部における構成が視認しにくい場合や,本件商標から,4本の細長いストライプではなく,それらの間に存在する空白部分を3本のストライプと認識する場合などがあり,これらのことから,3本のストライプから著名なアディダスのスリーストライプス商標を想起するものと認められる。
また,4本線商標かスリーストライプス商標かという相異についても,靴の甲の側面に商標として付された場合,さほど大きな区別のメルクマールになるものとはいえない。
さらに,本件商標は,4本線商標というのみならず,台形様図形の向かい合う2辺の各々に沿って表示された2本のステッチ状の模様とその間に均等間隔に表示された多数の小さな丸点が描かれている点において,引用商標と異なることは確かであるが,アディダスのスリーストライプス商標の付された運動靴において,甲の両側面に付されたスリーストライプス商標の各ストライプの向かいあう2つの長辺に沿ってその内側に2本のステッチ状の模様(これは商標を靴の甲の側面に付す場合の縫い目のようにも見える。)のあるものが多数存在し,3本のストライプ間の中央部又はストライプ中央部にストライプに沿って直線上に多数のパンチング(小さな丸い孔)模様のあるものも存在することを考慮すると,本件商標の「2本のステッチ状の模様」及び「多数の小さな丸点」は,本件商標の構成において,格別の出所識別機能を発揮するものと認めることはできない。
ウ 以上検討したところによれば,単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りないのであって,本件商標と引用各商標(アディダスの著名商標)との構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当し,原告ら主張の取消事由1は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は違法として取り消されるべきである。

4、これから商標登録する際に

このように、裁判所は鳥費の実情を詳細に認定して、アディダスの主張を認めました。
この事件からの教訓は、仮に特許庁段階での審査をクリアして商標登録が認められたとしても、第三者による無効主張が認められる可能性もあるということです。
この傾向は、特に当該第三者の商標が著名である場合に顕著になります。
これから商標登録をお考えの際には、登録できればそれでいいとは考えず、無効や異議の申し立てが無いように、事前に詳細な調査を行うことが重要です。

 

 

この記事は知財高判平成24年11月15日(平成23(行ケ)10326)を元に執筆しています。