商標登録における商品指定の難しさ~ロゴチャームは身飾り品か~

前回は商標登録における指定商品の類似範囲について争われた実例をご紹介しました。

類似する商品って何?(商標登録の指定商品の類似範囲)~「つけまつ毛」と「二重まぶたテープ」は類似するのか~

今回は、そもそも商品を指定する際の難しさを表した事例をご紹介します。

1、商標登録の際の商品の指定

この事件では、商標権者はその登録商標の指定商品を第14類「身飾品,宝玉及びその模造品,時計」等としていました。
そして、その登録商標を付して販売していたのは「ロゴチャーム」という商品でした。
ロゴチャームは,フック,リング,チェーン及びチェーンの先端に付いたチャームで構成され,リングにフックとチェーンがつながれたものです。
また,リングにつながれたフックとチェーンは,それぞれリングから容易に取り外すことが可能な構造となっています。
特許庁は,本件商標を付した「ロゴチャーム」と称する商品(以下「本件商品」という。)が,「バッグの装飾品」であって,「チャーム(鎖用宝飾品)」ということはできず,対象指定商品に当たらないと判断し、登録商標が使用されていないとして、登録商標の取り消しを決定しました。
この特許庁の判断に不服を申し立てたのが、今回の事件です。

2、裁判所の判断

一 本件商品の「身飾品」該当性について

1「身飾品」の意義

商標法施行規則別表及び「商品及び役務の区分解説[国際分類第9版対応]」によれば,「身飾品」とは,おしゃれを目的として使用される装飾品であり,イヤリング,ネックレス,ブレスレットなど,直接身体に付けて使用される商品のほか,ネクタイピンや貴金属製バッジ,宝石ブローチなど,直接身体に身に付けるものではないが,衣服等に付けて使用することにより間接的に身体に付ける商品も含む概念であり,このことは,当事者間に争いがない。

2認定事実

後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

本件商品の商品名は,「ロゴチャーム」であり,その構成は,フック,リング,チェーン及びチェーンの先端に付いたチャームで構成されており,リングにフック及びチェーンがつながれているが,フック及びチェーンは,それぞれリングから容易に取り外すことが可能なものである。

本件商品は,原告のホームページにおいては,「キラキラ☆ラインストーンが輝くチャーム」,「ハート型の赤いハートと鍵がポイントのアクセサリー」などと紹介されている。

本件商品の商品名は,「ロゴチャーム」であるところ,「ロゴ」とは,商標等のデザインされた文字又は図形を意味している。
また,「チャーム」とは,「お守り」又は「魅力」を意味し,時計やブレスレット,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに付ける小さな飾りをいい,近年では,多種多様なフックの普及に伴い,携帯電話やバッグのほか,直接洋服に付ける場合もある。
なお,チャーム及び鎖用宝飾品は,いずれも,商標法施行令別表第14類に属する。

山陽商事株式会社の取引先は,本件商品が,バッグ,携帯電話,キーホルダー等の飾り物としての使用を含め,客の好みに応じていろいろな用途に使用されるものと認識している。

本件商品と同種の商品は,フックの部分をバッグの金具等に飾りとして付けることができるほか(バッグチャーム),ズボン等のベルトループに通し又はベルトの穴に付けたり(ベルトチャーム),キーホルダーに付けたり(キーチャーム),ブラウスに付けたりして使用することができ,また,それ自体をブレスレットやネックレスとして使用することもでき,ファッション雑誌等において上記のような使用状況が掲載されている。そして,このようなものも「チャーム」とも呼ばれている。

本件商標を付した山陽商事株式会社の平成22年の商品カタログには,「SAVOY」ブランドのバッグが約860点掲載されているが,バッグ自体にチャームを取り付けることができるものは,そのうち約94点にすぎない。

3 本件商品の「身飾品」該当性

前記認定の本件商品の名称や構成,販売時の広告態様,本件商品及びこれと同種の商品についての使用状況やこれから推認される取引者及び需要者の認識等に照らせば,本件商品は,時計やブレスレット,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに付ける飾りであるが,バッグに取り付けて使用するのみならず,これを洋服に付けたり,それ自体をブレスレットやネックレスとして,使用することもできるものであり,「アクセサリー」として紹介されているものということができる。
このように,本件商品は,洋服に付けたり,それ自体をブレスレットやネックレスとしても使用することができるものであるから,前記認定の,おしゃれを目的として使用される装飾品である「身飾品」にも該当するということができる。
よって,本件商品は,「バッグの装飾品」であって,「チャーム(鎖用宝飾品)」ということはできず,対象指定商品に当たらないとした本件審決の認定判断には,誤りがある。

二 被告の主張について

被告は,本件商品は,キーホルダーとして使用され得るが,併せて,「身飾品」としておしゃれ小物の用途に使用される可能性があるとはいえないと主張する。しかしながら,1つの商品が複数の機能・用途を有することもあり得るのであるから,ある商品が常にいずれか1つの商品に属すべきものであって,他の用途に使用されることがあり得ないとするのは相当でない。
よって,キーホルダーとして使用される商品が,異なる用途に使用される可能性がないということはできない。
被告は,取引者である原告の本件商品の名称についての認識は揺れ動いており,本訴において,本件商品の用途を追加する主張を行ったとして問題視する。
しかし,本件においては,通常使用権者が本件審判請求の登録前3年間に本件商標を包装に付して販売した本件商品が,客観的にみて対象指定商品に係る「身飾品」に該当するか否かが問題になるのであり,原告の訴訟における主張や認識のみが問題になるものではない。
被告は,「チャーム」とは,ネックレスとして下げる飾りの部分をいい,「飾り小物」を意味する語で,社会通念上使用される用法であると主張する。
しかしながら,「チャーム」は,鎖の先に付いたような飾り小物として使用されるのみならず,ネックレスやブレスレットとしての用途も有するものであり,そのような用途が広くファッション雑誌等に掲載されていることは,前記のとおりである。
被告は,原告が商品を購入した人の「工夫次第で広がる使用法」をも自己の商品の用途に取り込もうとするものであると主張する。
しかしながら,現にファッション雑誌等に様々な使用方法が紹介されていることに照らすと,おしゃれに敏感な需要者が,それと同様の使用を試みるであろうことが推認され,そのような用途のものとして商品を認定することに,何ら問題はない。
以上のとおり,被告の主張は,いずれも採用することができない。
以上の次第であるから,原告の主張する取消事由には理由があり,本件審決は,取り消されるべきものである。

3、これから商標登録する際に

近年、これまでは、ある特定の分野で用いられてきた商品が、別の用途で用いられるということがよくあります。
今回の事件もそのようなものです。
これまでは、登山用品などで取り扱われてきた商品がファッション小物として扱われるようになっていたものを、特許庁はファッション小物として認めず、裁判所は認めたというものです。
このように、他の分野からの転用商品がこれまで特許庁で慣例的に分類された枠組みを超えて、複数の商品区分に該当することはこれからも増えていくものと思われます。
この事態に対する対処法としては、商標登録の際に指定商品をできるだけ詳しく記載することという基本的なものを徹底することが必要です。
特許庁の例示する商品名に頼るだけでなく、具体的な商品名を記載するということです。
ただし、この方法をもってしても、今回のような事態には対処できないかもしれません。
この場合には、残念ながら裁判まで持ち込んでも、自社の主張を押し通すことが必要となるでしょう。

 

 

この記事は知財高判平成24年12月5日(平成24(行ケ)10277)を元に執筆しています。