商標登録の願書に記載する必要がある「指定商品・指定役務」とは、何ですか

自社で販売する「商品」や提供する「役務(サービス)」を他社の商品等と区別するための識別標識が「商標」です

「商標」はあくまで自社が取り扱う商品・役務を他社のそれと区別するためのものですので、その「商標」を用いて、どういう「商品」を販売し又は「役務」を提供する権利を保護してほしいのかを出願時に示さなければなりません

自社は製造業だから「製造業」という指定をすることや、建築業だから「建築業」、飲食業だから「飲食業」というように業態を指定することは現行法上原則として認められていません。

製造業であれば、たとえば「化粧品」であるとか、「服」、「建具」、「スキャナー」、「測定装置」など、どんな製品を製造しているのかを指定しなければなりません。

建築業であれば、その提供するサービスは「建築工事」という役務を指定することになり、飲食業では「飲食物の提供」という役務を指定することになります。

この出願時に願書に記載する「商品・役務」のことを「指定商品・指定役務」と言います。

「商標」と「商品・役務」をセットで登録しなければならないということは、例えば「ルピナス」の商標だけを登録しておけば、すべての「ルピナス」という表示を禁止できるというものではないということを意味します。

このことは、逆に言うと、「商品・役務」が異なれば、「商標」が同一でも登録できるということです。

例えば、「ルピナス」の商標は、商品「化粧品」や「香料類」についてはすでに登録がされているけれども(第558538号)、弁理士業を示す役務「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務」ではまだ登録されていないので登録できるということです。

この出願の際に指定する「商品・役務」を間違えるとせっかく取得した登録商標も無意味になることがあるので注意が必要です。

ある商標権侵害事件が示唆する指定商品・指定役務の重要性

同一の商標「モンシュシュ」を用いてケーキなどの菓子を販売しているA社とB社がありました。

A社は役務「飲食物の提供」について登録を得ており、B社は商品「菓子」について登録を得ていました。

上述したように、類似しない商品・役務においては同一の商標でも登録することができます
そして、特許庁において「飲食物の提供」と「菓子」は類似しないとされているので、異なる会社が同一の商標を登録することができていたのです。

当時A社はロールケーキ等の商品の包装に「モンシュシュ」(実際の態様は下の画像を参照)の商標を付けて販売していましたが、ここに盲点がありました。

商標権者が、自身の登録商標を独占的に使用できる行為の態様は法定されており、商品又は商品の包装に商標を付ける行為や、その物を販売する行為の独占権は「商品」の商標権者にしか認められていないのです。

分かり易く言うと、菓子の包装に商標を付けて販売してよいのは商品「菓子」について登録を得ている商標権者だけということです

役務「飲食物の提供」について登録を得ているからといって、他に「商品」についての商標権者がいる限り、「菓子の包装に商標を付けて販売」する行為は、してはいけない行為だったのです。

結局、裁判所はB社の主張を認め、A社は商標を変更することになりました。

<参考>左=変更前の商標、右=変更後の商標

指定商品等の説明

このように、願書で指定する「商品・役務」は非常に重要です。

商標登録はしたけれど、「商品・役務」の指定を誤ったために実際に問題が生じたときに使えないというのでは元も子もありません

弊所では、調査のご依頼を頂いた時点で、どのような商品を販売しているのか、どのようなサービスを提供しているのか、その商売の形態はどのようなものかをお聞きして、穴のない最適な「商品・役務」をご提案いたします

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