文字とロゴマーク、どちらで商標登録すべきでしょうか

文字とロゴマークに組合せに関しては、①文字だけ又はロゴマークだけの商標、②文字とロゴマークの組み合わせからなる商標、の2態様が考えられます。
結論から言えば、この2態様の商標はそれぞれ守備範囲が異なるので、どの態様で出願し登録を得ると良いのかは一概には言うことはできません。

そこで、それぞれのメリットとデメリットを実例と共にご紹介します。

1、文字とロゴマークとの組み合わせで登録するメリットとデメリット。

文字とロゴマークの組み合わせからなる商標は、両方が表示されているのだから一番良いのではないかと、よく質問を受けます。
文字とロゴマークの組合せで登録を得ると、商標1つ分の費用で済むので費用面ではメリットがあります。
デメリットとしては以下のようなことがあります。
まず権利範囲についてですが、文字とロゴマークの双方が含まれているので権利範囲も広そうに感じてしまいます。
しかし、商標が類似するか否かの判断は、あくまでその商標全体を観察して行われるという点に注意しなければなりません。
ここで、他社が自社の商標の文字部分だけが似ている文字商標´を付けて商品を販売しているとします。
この場合、裁判所が「登録商標はロゴマークと一体になったものである」と判断すれば、その他社が使用している表示にはロゴマークはないのですから、全体としては似ていない、すなわち非類似と判断されることもあるということです。
また、使用していない商標は取り消される可能性があるということも、頭を悩ませます。
例えば、以下のような事件があります(取消2013-300749)。
取消審判の説明用商標

 

 

登録商標は上記のようなものでしたが、実際にはロゴマークの部分は使用せず、もっぱら文字部分だけを商品に付していたところ、特許庁は次の様に述べて登録を取り消したのです。
「本件商標は,別掲のとおり,帽子をかぶり,手を開いた状態の左腕を文字方向に伸ばし,その文字部分を他人に見せるようなしぐさで,やや左向きに立っている人物図形と,筆記体風の太字をもって「Peter Storm」と横書きされた文字との結合商標である。
これに対し,使用商標は,本件商標中の「Peter Storm」の文字と同一の文字からなるものであって,本件商標中にある人物図形部分が存在しないものであるから,本件商標と社会通念上同一ということができない。」
厳しい判断にも思えますが、「ロゴマーク込みで登録したのであればロゴマーク込みで使用しなさい」と当然のことを言っているだけであるともいえます。
取消を回避するにはロゴマーク込みで使用していればよかっただけなのですから。
このように、ロゴマーク込みで登録したのなら、絶対にロゴマーク込みでその商標を使用するということにご注意ください。

2、文字とロゴマークを別々に登録するメリットとデメリット。

この場合のメリットは保護範囲が広がり、使用態様にも柔軟に変更できるということです。
上記の取消審判の例でいうと、文字とロゴマークを別々に登録しておけば、文字だけを使用していた場合、少なくとも文字商標は取り消されることは無かったと考えられます。
もちろん、ロゴマークはロゴマークでどこかで使用していなければ、取消の憂き目を見ることになりますが。
したがって、権利確保を万全にしたい場合は2態様どちらも登録を得ておくことをお勧めします。
実例として、銀行の登録例を見てみます。
商標の登録態様実例

流石に銀行ともなると権利保護の体制もしっかりしています。
このように商標のパーツごとに登録して最大限の権利保護を図っています。
ただし、デメリットとして、この場合は登録にかかる料金も増えるというのが悩ましいところです。

3、それでは結局のところ、どうすればよいのか。

折角登録が認められても、後々取り消されるというのでは、何のために商標登録をするのかわかりません。
そこで弊所では、まず実際に使用する態様で出願することをお勧めしています。
実際に使用していれば、取り消されるおそれは低くなりますし、料金も1つの商標分で済みます。
しかし、もし予算に余裕があるのであれば、やはり3態様のすべてを出願することも検討してください。

「権利を最大限確保し盤石の態勢を整える」

これこそが貴社のブランド戦略の礎となるのですから。